ベンチャー企業への投資に際して、「『起業家』という人を見て判断する」ということは、よく言われることである。実際、アイデアと試作品くらいしか無いベンチャーの場合、将来の収益を生み出すのは、そこで働く人たちに大きく依存することになるので、その「人」を見るということは、とても大切である。そんなことは、誰でも理解できることであろう。 では、なにを、どこを見ているのかというと、これは人によってさまざまである。基本的なコミュニケーションができなければならないのは当然であるが、実際、ここでひっかかることも多いらしい。何がひっかかるかというと、基本的なプレゼンテーションスキルの問題が多いようである。これは、日本人に限ったことではない。アメリカで働く人たちにはさまざまな人がいる。逆に、日本人でもプレゼンテーションがうまい人はいる。 ただ、プレゼンテーションには、性格からくるスタイルというものもあり、朴訥と話すというのが、ある人やある分野で働く人たちにとっては好感をもたれやすいということもあるようなので、一概に「立て板に水」というのが素晴らしいというわけではない。 さて、基本的なコミュニケーションができることを前提とすると、まず大切なのは、「誠実さ」だろうか。詐欺師のような人にお金を預けたいと思う人はいないだろう。正直で誠実に仕事をするということは、とても大切な要素であろう。他人の忠告にも耳を傾けることができるとか、他の人と協力してやっていけるとか、そんなことにもつながってくるのかもしれない。もちろん、誰に、あるいは何に対して「誠実」なのかということは、問題ではあるが... そんな「誠実さ」を兼ね備えていながらも、次に大切なのは、「自分よりも優秀な人から、協力を得ることができる」ということが挙げられるだろう。これは、能力というのか、人望というのか、なんというのかよく分からないが、自分の弱点も強みも十分に把握した上で、必要なときに、必要かつ重要な人という資源を調達することができるかということである。 このことは、例えば、小さなところでは、ベンチャーキャピタルベーシックの中でも一言触れたが、自分のことを理解してくれた上でバックアップをしてくれる「referral」を得ることにもつながってくる。referralが得られないということは、その業界の誰にも信用されていないということであるから、なかなか実質的な提案にはつながりにくい。やはり、あの人が言ってるんだからと思える/思わせることは、ステップを進んでいく上でとても大切である。ちなみに、これは、どんな仕事でも同じで、championがいてこそ、物事は動いていくという側面がある。(参考:「チャンピオン」あなたを擁護してくれる人) また、ベンチャー企業の場合は、一流の人を集めなければならないのだから、「自分よりも優秀な人から協力を得ることができる」という能力に生存がかかってくる。コンピュータ業界を席巻しているデル氏などはその典型といえるのかもしれない。 そう見ると、成功した企業の創業期に集まってくる人は、創業者と同様か、あるいはそれ以上に、どこか秀でたところがあるものなのだろう。そういう人を集めなければ、ベンチャー企業はすぐに衰退してしまうのだから。 このような素質という点では、起業家というのは、特別な人のようであって、実はそうではないということが分かる。会社に勤めていても、官庁で仕事をしていても、さらには家庭生活していても、どこでも、「人間として」先の2つのポイントは大切であろう。 もちろん、こんな素質の他に、知的であるとか、理解が早いとか、リスクを計算した上でとることができるとか、いろいろあるかもしれないが、やはり、「誠実さ」と「自分よりも優秀な人から協力を得ることができる」というポイントは、シリコンバレー流に大成功する起業家にとっては、とても大切な、とてもベーシックな素養であり、そして必要不可欠なものなのだろう。 上田嘉紀 / ベンチャーキャピタル http://entre.exblog.jp